人生、それはわからん

最後から二番目の虚妄

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SIN

  1. 2017.05.07(日) _05:41:11
  2. メイジももんじゃ
  3.  コメント:0
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絶対無敵妹様ルナちゃんさん
戦闘力は無いです


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妖精さんが手の中でモゾモゾしてるのなんかいいよねって、つい脱出を阻止して抵抗させちゃう癖があるのは
指と指の隙間からなんとか通れないかとこじ開けようとするハムスターを微笑ましく見ている時の気持ちに似ている

何か言ってるときは聞いてあげてください


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○ 駄天使
× 堕天使

言動・挙動が垢抜けてないので子供っぽく見られがちな二十代後半
この子はちょっと元データがあるので髪型を特徴的にデザインすることができませんでした!
ここがカワイイなので……弄ることを私自身が赦さなかったのだ……







 始まりは、ある老人の酔狂だった。

 14世紀中期、百年戦争のさなか。フランスはポワティエの戦いにて多勢を率いながらも大敗を喫した。
 休戦の契機となった黒死病の流行も追憶するには新しい。飢饉、そして経済破綻、更にはクレシーの戦いに続くこの度の連敗は、荒廃した国土に昏迷の陰を差した。
 負け戦を生き延びた傭兵に払う給料も無く、歪んだ力の矛先は、より弱い者へと向かう。
 自国内での略奪が横行し、重税に喘ぐ村々は殊更に荒れ、反乱と暴動が内側から国を焼いた。

 傍観者がいた。
 老人は全てに倦み、濁った瞳で戦乱の世をただ閲していた。
 彼は故郷に帰るすべを持たない。まだ存在していないからだ。男はかつて起きた大時空震に過去のすべてを押し流され、時の川辺の泥澱に坐して朽ちるのを待つ身であった。
 いつかその老いた眼に、光のきらめきにも似た、小さな白い影が映る。影は、ひどく衰弱した亜人の少年の姿をしていた。
 それは背中の翼を血に濡らし、震えて彼を見返した。

 北フランスの小村にて、火と刃の禍中に取り残された小さな生命を、彼が何を思ってすくい上げたのかは知れない。
 酔狂と言えばそれまでのことだ。ひとたび手を伸ばせば、それからは堰を切ったように、彼は打ち棄てられた未来を拾い集めた。
 懐かしき未踏の地平から、男に残された唯一の遺産――恒星間移民船、ゲッセマネ。もう動かすことは無いと思っていた、とうに絶えた希望の象徴。
 寄る辺持たぬ彼らの、そこは楽園となった。

 時はわずかに流れ、若き傀儡シャルル6世の即位に伴い、ブルゴーニュ公が摂政となり、悪政が国を覆った。対立するアルマニャック派とブルゴーニュ派とで国内諸侯は二色に割れ、荒んだ民衆の間では反乱や一揆が頻発した。
 そんな折、噂が立った。
 清廉な衣に身を包んだ白い翼の青年が、どこからか現れ、貧しく病める人々を救うと言う。
 人はその虚像を都合よく捻じ曲げ、天使と呼んで讃えた。
 やがて天使の信奉者により、翼持つ亜人の子を特定の周期で天の国へと捧げるという習わしが生まれた。

 老いたる始祖の理念は時とともに忘れ去られた。
 今や『天使』達は自らを天使そのものと信じ疑わず、秘密主義の教団と化して独善的な救いを振り撒く。
 己らが住まい、天の国と呼ぶ艦の由来も意味も知らず、地上にもたらす救済を正義と信じながら。

 18世紀。
 今に至るまで続いたブルボン朝の支配力は、カフェやサロンを通じた啓蒙思想の伝播によって斜陽に至り、革命を間近に控えた国内には騒乱の機運が高まりつつあった。

 未だ血は流れない。しかしいずれその時は来る。とある母は、戦火を嫌って娘を抱いて駆けた。翼持つ少女は母の胸に抱かれ、深い森の中へと消えた。
 後の行方は杳として知れず。彼女が北部の古い言い伝えを知っていたことは、いずれ誰の記憶からも忘れ去られるだろう。

 星霜は巡る。
 清廉な白い衣に身を包んだ彼女は、背の翼をはためかせ、蒼い瞳で街を見下ろして、一つ大きな欠伸をした。

 --More--






◆TIPS:ゲッセマネ

 西暦4300年ごろに建造されていた大型の恒星間移民船。
 亜存在事変の折に、事態の解決が図れなかった場合に備えて最後の希望として造られた。
 比較的大型の艦ではあるが、当時同様に造られていた同型の艦をすべて合わせても
 地球人口の全てを収容するだけの容積はなく、ごく限られた一部の人間を助けるためのもの。
 内部には擬似的かつ理想的な地球生態系を再現するための環境が整っており、
 人間の他にも多数の動植物の多様性を保存し、植民惑星に根付かせるための用意がある。

 名前はキリストが最後の祈りを捧げたオリーブの園に由来する。
 人類に残される『最後の楽園』という意味合いで命名されたが、設定的には完全な皮肉。
 『父よ、御旨ならば、此の酒杯を我より取り去りたまへ、されど我が意にあらずして御意の成らんことを願ふ』
 ――ルカによる福音書 第22章42節に記されている、ゲッセマネの祈りの一文である。
 『酒杯』とは旧約聖書の時代から出てくる言葉で、これは神の怒りを指す。
 この言葉を現代風に訳すと『まだワンチャンない?』であり、
 もうちょっと丁寧に言うと、『神よ、人間の罪はそれほどまでに深いのか?
  そうではないのなら、その怒りの杯を今この身の上から取り払ってはもらえないだろうか?
  しかし真に彼らが罪深いと思うのならば、喜んで私は人々の身代わりに罪を背負いここで死のう』
 という意味合いになる。
 ……結果としてどうなったのかは恐らく皆が知っての通り。人の罪咎は赦されることはない。




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